BitLockerはWindowsに標準搭載されている強力なドライブ暗号化機能ですが、通常はTPM（トラステッド プラットフォーム モジュール）を使用してセキュリティを強化する設計になっています。
しかし、TPMが搭載されていない・無効化されている場合や、あえてTPMを使わずに運用したいという場面では、標準の設定ではBitLockerを有効にできません。
本記事では、TPMなしでBitLockerを使わざるを得ない理由と、そのための対処法、運用上の注意点について詳しく解説します。
目次
TPMなしでBitLockerを使う必要がある主な原因
TPMなしでBitLockerを使う必要がある主な原因は次の通りです。
PCにTPMが搭載されていない・無効化されている
古いPCや安価なノートPCなどでは、物理的にTPMが搭載されていないことがあります。また、BIOS/UEFIでTPM機能が無効になっていると、BitLockerは利用できません。
意図的にTPMを使わずに運用したい
セキュリティ要件や運用ポリシーの都合により、TPMを使用せずにBitLockerを構成したいという要望がある場合もあります。
TPMが故障している、またはセキュリティポリシーで使用できない
BitLockerの利用にはTPMの正常動作が前提ですが、TPMがロックアウト状態（総当たり攻撃などによる自動ロック）になっていたり、企業のポリシーでTPMが無効化されている場合、BitLockerはエラーを起こし動作しないことがあります。
このような状況では暗号化の開始や回復キーの入力もブロックされ、データへのアクセスが制限されます。無理な対処はシステムに悪影響を与える可能性もあるため、TPMの状態やポリシー設定を正確に確認することが重要です。
当社ではTPMやBitLocker関連のトラブルに幅広く対応しており、企業環境やセキュリティ制限下でも柔軟にサポート可能です。初期診断・お見積りは無料、365日24時間体制でご相談を承っております。
TPMなしでBitLockerを有効化する方法
TPMが使えない状況でも、グループポリシーを変更することでBitLockerを有効化できます。また、運用時にはUSBやPINを使った追加認証が必要になる点に注意が必要です。
グループポリシーの設定変更
TPMが搭載されていないPCでも、グループポリシーを変更することでBitLockerを有効にできます。
- 「Windowsキー + R」で「gpedit.msc」と入力し、グループポリシーエディターを起動。
- 「コンピューターの構成」→「管理用テンプレート」→「Windowsコンポーネント」→「BitLockerドライブ暗号化」→「オペレーティングシステムドライブ」を選択。
- 「スタートアップ時に追加の認証を要求する」をダブルクリックし、「有効」に設定。
- 「互換性のあるTPMが装備されていないBitLockerを許可する」にチェックを入れて「OK」。
- 設定後、「BitLockerの管理」から有効化を実行し、手順に従って暗号化を開始。
起動時認証の追加
TPMを使用しないBitLockerでは、USBキーまたはPINコードを利用して起動時に追加認証が必要になります。
- USBキーの場合、必ず安定したポートに接続し、紛失しないよう注意。
- PINコードは記録・保管しておき、忘れないよう管理。
- USBやPINを忘れるとPCが起動できないため、必ず回復手段を用意。
回復キーの管理とバックアップ
BitLockerを使用する際には、回復キーを必ず安全に保管しておく必要があります。
- 回復キーは印刷または別の外部メディアに保存。
- OneDriveやMicrosoftアカウントへの保存も可能。
- 回復キーを紛失するとデータの復旧はほぼ不可能となるため、厳重に管理する。
TPMを使用しないBitLocker運用には、いくつかのセキュリティ的・運用的な課題があります。以下に代表的な注意点を紹介します。
- 物理的攻撃への脆弱性： TPMがない場合、暗号化キーがメモリやUSBなど外部媒体に保存されるため、コールドブート攻撃やデバイスの物理盗難によるリスクが高まります。
- セキュリティの一元管理が難しい： TPMならOSと密接に連携できますが、TPMなしではUSBやPINといった個別要素に依存するため、管理が煩雑になります。
- 運用上の手間が増える： 起動時に毎回USBを接続したりPINを入力する必要があり、ユーザーの手間が増える傾向にあります。
TPMが搭載されていない、または利用できない環境でも、グループポリシーを設定することでBitLockerを有効にすることが可能です。TPMなしのBitLockerは、USBやPINによる認証を必要とし、セキュリティリスクや運用面の注意点もあるため、回復キーの管理やUSB紛失の防止などの対策をしっかり講じたうえで導入してください。
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この記事を書いた人
デジタルデータリカバリー データ復旧エンジニア
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HDD、SSD、NAS、USBメモリ、SDカード、スマートフォンなど、あらゆる機器からデータを取り出す国内トップクラスのエンジニアが在籍。その技術力は各方面で高く評価されており、在京キー局による取材実績も多数。2021年に東京都から復旧技術に関する経営革新優秀賞を受賞。
